建築にまつわるエトセトラ

蛙(かわず)の見る空

リブ建築設計事務所 主宰山本一晃のブログです。

11回目<僕が「中島みゆき」の歌を愛する理由>

■H25年5月2日

11回目<僕が「中島みゆき」の歌を愛する理由>
     

<「幸せ」の意味>
 余談ですが(というか全てが余談という話もあるが)私の辞書にはかつて「愛する」という言葉はありませんでした。どうも日本の文化圏の外側の概念なので意味がわからん。使うのも恥ずかしいし・・・が、何かの折に河合隼雄が「愛する」とは「決して関係を断ち切らないこと」と定義しておられ、「これなら使える!」と思いました。で、私はみゆきさんの歌も「愛して」います。
 同じような話で「幸せ」という言葉もあまり関心のない言葉でした。前回も書いたように、「人間は単に地球に寄生する生物の一種」なので、「幸せ」になるために生まれてきたのではない」と私は思っているからです。
 これについてはみゆきさんが、うまい説明をしてくれました。

 
「辛い」という文字の上の棒をぐっと引っ張って「1」を「十」にすると「幸せ」になる。つまり十分「辛い」を味わってわかるのが「幸せ」よね・・・・

 こういう情のある考え方が私は好きです。癒されます。

<「癒し」のツール>
 恐山に
南直哉(ジキサイ)という禅僧がいます。(YOUTUBEで検索すると話が聞けます)
彼は「死にたい」と嘆く人に対して「生きているのがいやなので死にたいという考えなら死ぬな」と諭します。仏教の教えをその際「ツール」として使います。という意味の話をされていました。私にとってこの言い回しは新鮮でした。というのは宗教者といえば、キリスト教なら「キリストの教えがすべてだ」として人生の全てをキリスト教にささげる・・というイメージが普通だろうなと思うからです。
 みゆきさんも「私の歌で癒されるならそのためのツールとして聞いてもらえばよい」と語っています。要するに聞きたい気持にならないなら聞かなくてよいですよということ。みゆきさんの歌を「緊急避難所」にしてる人もきっと多いですよね。また「歌の意味の解釈は聞く人にまかせる」として、彼女は自分の歌の解説はしません。聞く人の自由にまかせています。

 こういう態度が私は好きです。人の気持ちがよく分かっていると思います。

<中年の気持ちがわかる??>
 NHKで「人生の10曲」を選ぶという番組があって、ファッションデザイナーの山本耀司という人がみゆきさんのヘッドライト・テールライトを選んでいました。この歌の「旅はまだ終わらない・・・」という部分で、「俺もまだやれるんだ」と思ったという話。私もポピュラーな地上の星よりこちらの方が好きです。三番の歌詞で「行く先を照らすのはまだ咲かぬ見果てぬ夢。はるか後ろを照らすのはあどけない夢」のところが泣かせます。私も含め、多くの人の「立ち位置」と共振すると思います。このへんが「夢は必ずかなう!」と歌う、ある意味能天気な人達と一線を画しています。若い人にとってはそれでもよいのかも知れないけれど、私たち中年にとっては「現実」が見えてるのです。
 中年といえば
、「時刻表」も共感を覚える歌です。「満員電車で汗をかいて肩をぶつけてるサラリーマン。ため息をつくならほかでついてくれ。君の落したため息なのか、僕がついたため息だったか誰も電車の中わからなくなるから」・・・・

 こういう共感できる歌詞が私は好きです。なぜこんな歌詞が書けるかというと、人・社会を鋭く観察しているからです。その直観が如実に発揮された歌があります。

<「4.2.3」という歌>
 1997年4月23日(日本時間)テロリストに占拠されていた在ペルー日本公使邸に兵士が強行突入し、日本人の人質が無事開放されました。おそらくTVでこのニュースを見ていた中島みゆきは、レポーターが累々と横たわる傷ついた兵士やテロリストの背景にはふれず、日本人が解放されたことのみを伝えることに違和感を覚え、「この国(日本)は危ない。何度でも同じあやまちを繰り返すだろう」と直観してつくった歌(というより「叫び」)です。
 この時みゆきさんには知る由も無かったのですが直観はあたっていました。殺されたテロリストたちの多くは金で雇われた少年少女でした。ある少女はつかまり、一度外へ連れ出されて裸にされ、見せしめにされてから、射殺されました。ある日本人捕虜は、「兵士が突入して来た時、占拠していた少年少女が盾となってかばってくれた。そうでなければ我々が撃たれていただろう」と証言しています。これらの事実は決して報道されていない。(当時記者として取材にあたっていた青山繁晴はこの事に失望して記者をやめたとのこと。TOUTUBE青山繁晴 ペルー日本大使公邸占拠事件の闇」に詳しい)
 このように物事を先入観なく世の中を見つめて創った歌は他にもあります。「世情」「誰のせいでもない雨が」等等

 きりがないのでそろそろまとめを・・
FACEBOOKにも「中島みゆきさんがよい」と書いた手前、今回説明を試みましたが、まだまだ書ききれそうにないなー
 ちなみに少し前の話。通勤電車で私はいつも本を読むのですが、帰宅時に本を切らしてしまい、落ち着きの無い私は何かしていないと気がすまないので「そうや。ここから駅をでるまで(約1時間)中島みゆきの歌を歌い続けれるか挑戦してみよう!」と思い立ちました。
 結果は・・・多分一時間半くらいは大丈夫だとわかりました。(電車で横にいた人は「この人なんで口をもごもごさせてるんや?」と思ったことでしょう。)
私は中島みゆきさんの歌をその程度に「愛して」います。