建築にまつわるエトセトラ

蛙(かわず)の見る空

リブ建築設計事務所 主宰山本一晃のブログです。

8回目<無意識への招待>その2

■H25年4月15日

8回目<無意識への招待>その2
     *生命の起源と無意識

<生命はどうやって出発したの?>
 その1では「無意識」が生命の成り立ちと深く係わっているだろうというところまで進みました。ここで一度「無意識」から離れて、生命が成立した条件について考えます。
 私の友人にも「そんなん神様がつくったんやろ?」と理科系的でないことを言う奴がいますが、知れば知るほど複雑な生命の仕組みを、ある意志をもって創るのは不可能ですし、ましてや最初の生命に対して人に向かって進化する仕組みを組み入れる事など不可能!
 では偶然できたのか?ある学者が、そのために要する化学反応時間をざっと計算しても、宇宙ができて今まで(約138億年)より遥かに長いらしい。そもそも、宝くじで一億円当たった人が次にまた一億円当たる可能性はほとんどないだろうし、仮にそれが起こり得たとしても、そうしてごく低い確率で誕生した一個の生命が生き残れるなどと考えることは現実的でない!
 答えはその中間にあるはず。ある条件が整ったときに、生き残る可能性のある原初生命体が大量にできて、そのうち生き残れる条件を持った個体が進化の出発点となったと考えるのが妥当でしょう。(科学的にオーソライズされてる話ではまったくありませんが)ここで問題にしたいのは、その原初生命体(おそらくいろんな有機化合物の集合体)がどのような条件を持った組織であったかです。

<生命は自然法則にあらがう意思>
 例えば台風は毎年必ず発生します。これは誰かが棒を持って渦巻きを起こしているのではないし、低い確率で偶然できるのではなくて毎年必ず生じる現象です。台風の要素となっている空気を構成する分子は、自分たちがぐるぐる回ろうと思って回っているのではないけど、何らかのアルゴリズムにより、全体として渦巻きを構成している。こういう現象における部分と全体の振る舞いは複雑系の科学の対象です。(参考:「複雑系」Mミッチェルワールドロップ著:新潮社)サンタフェ研究所で始まったこの考え方は物理や経済まで対象としていますが、その中に人工生命をコンピューターシュミレーションを使って作り出すという分野があります。構成要素にどういう初期条件をプロムラミングすれば全体としてどう振舞うかについて示唆に富む報告がなされています。
 部分が組織化して全体を構成していく課程で、ある一つの命令が部分を支配するトップダウン型のプログラムよりも、トライ&エラーによって正解を見つけ出しながら全体を構成して行くボトムアップ型のプログラムのほうが、効率的に働くという結果があります。実際、例えば受精卵は分割し、分化して、いろんな器官ができて行きますが、ひとつひとつの細胞は、中央からお前は目になれ、お前は耳になれ、という指令をうけるのではなく、回りの様子を見ながら、あいつが目になるなら俺は耳になろうという振る舞い方をするといわれています。
 この様に
「自己組織化」しながら成果を記憶し、しかも経験を蓄積して次に生かせる能力があったからこそ進化できたのでしょう。これは「生命の意思」としか言いようがありません。なぜなら自然のままにまかせれば、「エントロピー増大の法則」により、無秩序(=死)へ至るのが必然だから。橋元淳一郎氏はここに「時間の意味」を見出しています。(「時間はどこで生まれるのか」集英社)

<「無意識」はどこにあるんだろう?>

 「無意識」のやってることはこの「生命の意思」(「意思」といっても「自意識」のことではない)そのものですよね。原初生命体がどうやってできたのかは私には(というか今の所誰にも)わからない。ただ一旦仕組みができてからは、「生き残る」ための戦いが「進化」であり、「無意識」の歴史であったのでしょう。
 では
「無意識」はどこにあるのか?経験はどこに蓄積されているのか?脳の中に収容可能か?どうやって子孫に伝えられていくのか?個体が死を迎えると同時に消滅するのか?
 という事柄に答えるのは少し別の切り口が必要・・というのが次回のお話となります。