建築にまつわるエトセトラ

蛙(かわず)の見る空

リブ建築設計事務所 主宰山本一晃のブログです。

4回目<母の家建替顛末記-その2->

■ H19年6月11日
  4回目<母の家建替顛末記-その2->            
● ● ● ● 敗北宣言 ● ● ● ● 
前回ご紹介しましたように、私の母の家の建て替え計画を進めるにあたって、現況の古民家の木材を使って家を建ててもらえる建主を募集しております。が、今の所問い合わせがなく、工事も先に延ばせない状況になってきましたので、やむなく通常の解体工事にかかろうと思っています。(涙)
現在工事契約もできて仮住まいの準備にかかろうとしています。(6月16日までなら間に合いますので希望の方は是非どうぞ!ホームページのTOPICS参照) 今回は母の家の仕上イメージについてお話します。

<竹と織物の話>Img0120076    
 母の家(私の実家です)は泉州岸和田市の竹やぶとみかん山に囲まれた山間集落にあります。前回書きましたように今の実家の木材は近所の方たちに手伝ってもらって近くの山から切り出してきたそうです。
今はそんなことはできないのでせめて竹を切り出してきて新築する家に活かそうと考えました。
 また泉州地方は織物の盛んな地域でした。こんな田舎のほうにも織物工場があちこちにあって、私が子供の頃、朝はいつもImg0220076_1機織の音で目覚めていました。今では泉州全域で織物工場はほとんどなくなってしまいましたが、母の実家は技術革新によって今でも生き残っている数少ない織物工場のひとつです。(竹田織物といいます)工場の倉庫にはロール状に巻いたいろんな柄の織物のストックがいっぱいあって、これを内装に活かせたら面白いなと考えました。
    

<古びる建物 ―か弱い表現―>Img0320076
 「竹」は割ってすのこ状にし、居間の天井に使うことにしました。
「織物」はポイントになる壁に使っていろんな柄を建物のあちこちに散在させることにしました。どちらもいわば「はかない」材料です。そこに力強さはありません。時間がたてば古びていく材料です。「か弱い表現」がこの家のコンセプトです。「ハイスタイルな」「カッコいい」表現はしていません。余生をのんびり暮らす母の家のためにはこうしてできる柔らかい空間が住空間としてふさわしいのではと考えました。Img0420076
 ただ、この間今の実家の屋根裏へ登って驚いたのですが、屋根の垂木の上に「板材」は存在せず、すのこ状の竹を敷いてその上に土を載せて瓦を葺いていました。六十数年間竹が瓦の重量を支えてきたのです。「か弱そうに見えるが実はしなやか」な材料なのです。そんな人間に私はなりたい!!!?

<竹騒動 ―皆様ご協力有難うございました―>
 昨年の11月に以前から目をつけていた岸和田の竹材店に相談Img0520076_2 に行きました。実家の竹やぶの竹を切って建材にしてもらおうというもくろみです。さらに言えば竹を継続的に買ってもらえたら商売になるかなとも考えていました。
 ところがどっこい。今では九州のほうから安い竹が大量に入ってくるため自分のところで切り出したり加工したりはしていないとの事・・。
 それでは工務店に切ってもらいますのでどうしたら良いでしょうと聞いたところ、竹は三月から夏にかけては虫がつきやすく、秋までは成長し続け不安定なので、切るなら11月前後しかないとのこと。この時点で工務店はまだ未定でしたので頼れず、自分で切るしかない!ことがわかりました。
 さらに切ったら何らかの方法で熱して油を滲み出させることによって「油抜き」の作業をしないと虫がつきやすくなるとの事。帰ってインターネットで調べたり木に詳しい人を紹介してもらって相談したりしましたが、「油抜き」がうまくできるかはよくわからないままとにかく必要本数(100本程度)を切り出して節を抜き(そうしないと乾燥したとき割れるらしい)干すところまで昨年中に済ませました。
 干して乾燥させてる間に「油抜き」の試行をしました。まずたき火で直に熱する方法。竹一本に30分もかかってしまい、焦げてしまってうまくいかない。次に先ほど登場した竹田織物の工場内に蒸気を噴霧できる装置があると聞き、試してみましたが油が出てこない。Img0620076
 結局先ほどの木に詳しい人(ATC内エイジレス工房の松山さんです)が一番良いといっていた方法を選択しました。まずドラム缶3本半割を溶接して接合し、竹のはいる釜をつくります。これは他の現場でお世話になっていた工務店に製作依頼しました。この釜で湯を沸かし、油を煮出すのです。
 写真④⑤のような作業を経てやっと使える状態になりました。(写真⑥)
 切り出し・油抜きにはリブ都市開発の成田氏と清水正勝建築設計室の清水氏に協力を仰ぎました。
 あとは工事をする大工さんにまかせる予定なのですが実はまだ難問が・・
それは乾燥した竹を割る方法です。幅3CMくらいに割りたいのですが自分でなたを使って割るとどうもうまくいかない。だんだんそれてしまって幅が一定にならないのです。これも前から目をつけていたのですが、通勤途中に、割った竹を保管している倉庫があって、この間そこに人がいたので竹を割る方法を聞きました。ところがそこの竹も九州から仕入れた竹で、「これは機械で切るんや。この辺でその機械は見たことないで」との事。ああどうなることやら・・・

<織物の使い方>Img0720076
 織物についてはうまい方法が見つかりました。川島織物に「FAB-ACE」という製品があり、織物を接着剤ではなく、キャンパスのように張る工法です。素人でも張替えできるそうなので気分によって布地を変えれば面白いと思っています。これは(株)インテアール植田氏(tel075-950-8435)に聞きましたので興味があればお問い合わせください。クッションが入っているので触ると気持ちの良い壁ができると思います。(写真⑦)