63回目 「お金で考えてはいけない」と思いたい!
-大西つねき氏のワクワクする語り口ー
<最後のピースが見つかった!>
お金のことを考えずに暮らしたいと思いますが、なかなかそんなことはできません。現に今も、今年度の仕事の見込みが定まらず、不安をいだきつつも(結果、時間があるので)この文章を書いています。
最近ネット上で「MMT理論(近代貨幣理論)」について解説する動画が散見できる。簡単に言えば
「インフレにならない範囲では、自国通貨建ての国債をいくら発行しても破綻することはない」
という、一見うさん臭そうな理論です。金をばらまきたい議員が飛びつきそうな考え方やなあ、という気がしますよね。ここで詳しくは解説しませんが、間違ってはいないようです。
中野剛志氏の解説→三橋貴明氏の解説の動画を見た後、(どういう素性の方かと思いながら)大西つねきという人の動画を見た。タイトルは「MMTの前に理解すべきこと」
最初、説明の上手な人だと思った。約20分後、いままで欠落していた知識の空白部分に最後のピースがはめられて、「経済」の全貌がわかったような気になりました。
<「経済成長」をめぐるジレンマ>
多くの人がそう感じていると思いますが「経済」のことはどうもよくわからない。わからないながらも、しつこく様々な方の言葉をひもといていると、これは正しいと理解できたこともあった。それは、
「経済成長には限界があり、以前のような成長は不可能。
従って、『経済成長に依存しない社会』にシフトする必要がある。」という事実です。
これは、多くの識者が根拠をもって説明しているにもかかわらず、政治家はもとより、一般的にはほとんどタブーとなっていますね。
根拠のひとつで一番シンプルなのは「人口減少」です。この先人口が1割減少すれば(これは十数年後と推計されています)GDPの6割を占める個人消費は1割減少する。約6%のGDPの減少分を労働生産性の向上とかリノベーションで埋められるはずはありません。
もっと詳しく知りたい方は水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」をお読みください。
先ほどのMMT理論に関する中野剛志氏や三橋貴明氏の解説に納得いかなかったのは、「国債をどんどん発行して財政出動すれば経済成長を取り戻せる」という論点でした。
これに対して、多くの識者はまた、「今の金融資本主義は『経済成長』がないと成り立たない」とおっしゃる。これはどういう意味なのか?もしどちらも正しいとすれば、解決策はないのか?というのが埋められない部分でした。
<しくみを変えなければ解決できない!>
まず金融システムと経済成長の関係が明快に説明された。結論から言えば、今の金融システムは、経済成長なしでは成り立たない。なぜなら、お金は誰かが借金することでしか増えない。(「信用創造」といいます)借金は利子をつけて返さないといけないので、全体としてお金が増えないと借金を返せない。そのためには経済成長して経済が拡大する必要がある。
しかしバブル崩壊以降、経済成長は鈍り、今はほとんどゼロ成長である→銀行の貸し出しも増えていない。→お金の総体(マネーストック)は増えないといけないので不足分は国債が埋めている。この先経済成長する前提条件もあり得ない。
というのが現状であるが、こんなシステムはいつかは破綻する!
氏の解決策としては、
①借金によってお金を作り出すというしくみ自体を変えないといけない。
②財政出動する際は、借金をすれば利子が将来世代のつけになるので国債によらず、政府通貨によらねばならない
ここまで明快な説明は聞いたことがありませんでした。
<大西つねき氏の理念>
もちろん、そう簡単に実現できる解決法ではありませんが、筋道を通して考えれば、やらないといけないということです。この事実を直視せずに、「経済を成長させるんだ!」と意気込んで失敗し続けているのが現状ですね。浜矩子氏はアベノミクスを「浦島太郎の経済学」と批判しています。
大西つねき氏は、この転換を実現するためには政治の力が必要だと考え、自ら政治団体「フェア党」を立ち上げ、活動しています。
単に上記の変革をするだけでは、人々は幸せにならない。あまりにも世の中不合理が多すぎる。そもそも国家経営の本質とは?ということから理念を組み立てて講演を行っておられます。
くわしくは氏の動画やサイトをご覧ください。いちばん詳しい動画として「20180709 目黒講演会 1~3」をお勧めします。
<お金で考えてはいけない>
お金のことに造詣の深い大西氏ですが、「お金で考えてはいけない」ということを主張しておられます。お金はそもそも銀行が帳簿上で作り出したものであるから、実体は存在しない。本当に現存しているのは我々の労力や時間でありその価値を無駄にしてはならない。この本質から物事を組み立て直さなければいけないというお考えです。
例えば
・「子育て」は価値を生み出す行為であるにもかかわらず、その対価があたえられていない。そのため一般的には夫への「依存」に頼っているのは不合理だ。
・「不労所得」は一掃すべき。特に土地はそれ自体価値を生み出さないので土地を買って借金をして利子を払うのは不合理だ。
<私たちの将来は?>
大西氏の描くような将来を想像するとワクワクします。ただの夢物語ではなく、経済理論に裏付けされているところに可能性を感じます。と同時にこの理念の体系を具体化するには、既存の政治の枠組みを飛び越えないといけないことも想像に難くない。
一方、大西氏も指摘していますが、日本の将来に時間的な余裕はありません。前出の水野和夫氏も同様の記述をしています。金融資本主義は末期的症状を呈している。逆手に取れば、少子高齢化、ゼロ金利がいち早く進行した日本が一番早く次世代のルールを見出せる可能性があるのですが。
<トホホなこの国の現状>
昨日、れいわ新選組の参議院選挙の候補者発表で安冨歩氏が意思表明をした。「資本主義を基にした国民国家が機能しなくなっている。そもそも『GDPを増大するという富国強兵策』から『一人一人の生活がたつ』という視点へ根本的な転換をしないといけない」と語っていました。同様の認識ですね。
実は大西氏もれいわ新選組の候補者にエントリーしているのですが、結果はまだ発表されていない。大西氏も政治活動を始めて数年になるがまだブレイクスルーは生じておらず、御苦労されてるようです。(本人からは苦労しているという表情は微塵もうかがえませんが。氏はいつも意気揚々です。)うまく風が吹いてくれればと願います。
*追記
7月2日、大西氏はれいわ新選組の候補者として発表されました!