建築にまつわるエトセトラ

蛙(かわず)の見る空

リブ建築設計事務所 主宰山本一晃のブログです。

65回目 ミスあゆみはミスターあゆむを軽やかに踏み越える

65回目 ミスあゆみはミスターあゆむを軽やかに踏み越える
ーれいわ新選組のユニークな候補者たち(安冨歩編)-

安冨歩さんという人物>
 れいわ新選組の候補者として東京大学教授の安冨歩が登場した際、思わず快哉を叫んだ。何というユニークな人選!
 安冨氏と言えば、女性装が際立ちますが、氏の話を聞いていると、単に女性の恰好が性に合っていたという以上に深い内面の挌闘があったようです。氏の事は女性装以前から知っていましたが、経済・歴史・宗教など幅広い分野の知識により、鋭い文明批評を行っていました。ただ女性装をしてから、開放されたというか、リラックスして活動しているように思います。
 今回の主張は「子供を守ろう」というシンプルでいささかお茶目なものですが、その背景には深い思考と洞察がありそう。
 氏の事は半分も理解できているとは思えませんが、氏の言葉をもとに、氏の世界に少しでも入り込めたらと思います。

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<教育についての二つの質問>
 氏は街頭で親たちに質問をします。
質問その①:「今、学校へ行って6時間授業を受けれますか」
 →ムリですよね。おとなは「お金くれなきゃ行かない」と言うだろうというのが氏の見解。私も「絶対ムリ!」です。なぜ子供の頃、平気でそんなことができていたのかわかりません。授業もそうですが、退屈な校長先生の訓話を聞いたり、体育座りして、順番を待ってたり、今なら我慢ができませんね。
質問その②:「学校で習ったことを覚えていますか?」
 →人によるでしょうが、微分積分や行列って何だったんでしょうね?全く思い出せません

 氏はこの結果で学校の授業がいかにムダか、ご飯を食べられない子や暴力をうけてる子がいるのになぜ授業ができるのか、その前に学校は子供たちを救う基地であるべきだ、と主張します。

 そもそも学校は軍隊教育の子供版だった。戦前は「天皇の子」としての臣民になるため枠をはめる必要がありました。戦後もその流れが続いていますから、枠からはみ出ないように「標準化」することはむしろ善であったわけですね。これが今の時代に合ってない事はいうまでもありません。枠からはみ出した子供にとっては苦痛でしかありません。

<父性から母性へ>

 候補者発表の際、氏は語りはじめました。

今の国民国家の仕組みは機能不全に陥っており、まるで「豪華な地獄」です。もはや「政策」でどうかなる段階を超えており、原則を変更しなければどうしようもない。
 私にとってはそれは「富国強兵」から「子供を守ろう」です。

 これはまさに「父性から母性への転換」ですね。これは氏自身の人格をかけた転換でもあったわけです。(まるで冗談みたいですが!)
 氏は、自分は「児童虐待からの生存者です。」と語っています。氏の両親は、戦時中の思想をもって厳しく氏を育てた。「あゆむ!そんなことをしたら、兵隊になれません!」と教育(?)されたそうです。
 女性装はそんな自分からの脱出でもあったわけですね。「あゆむ」と呼ばれることにも抵抗があって、今は「あゆみ」と名乗っています。両親とのすさまじい葛藤があったわけですね。

<ミスあゆみの選挙活動>

 氏はステレオタイプの選挙活動はしていません。「ユーゴン君」という白馬と練り歩いたり、音楽家片岡祐介とラップ風の音楽に乗せて主張を語ったりしています。一見すれば、真剣に当選する気はないように見える。ただ一人でマイクを握って話し始めると、聞いてて胸を締め付けられるような気分になります。
 氏が候補者発表の際、最後に語った内容が、その本気度を示している。それはもし当選したら得られる「国政調査権」を使ってこの国の国家の仕組みを解明したい、ということです。これはかつて民主党石井紘基議員が、特別会計の闇を調査していて暗殺された事実を踏まえている。氏は石井議員を最も尊敬する政治家だと言う。

<大西つねき氏との対照が面白い>

 63回目で紹介した大西つねき氏と安冨氏とは根本的な考え方で共通している。それは、
・今の社会システムは根本的に変革しないとどうしようもない。
・経済成長はもはや幻想でそれに依存しない社会を目指す必要がある。
・無駄な時間の使い方を無理強いされるのは間違っている。
といった共通の方向性を持っている。ただ、その表現の仕方が対照的で面白い。
 大西氏はひたむきに理屈立てて自己の考えを説明する。その説明はとても上手で説得力があり、その内容によって希望を与える。
 対して安冨氏は先ほどのように、肩の力が抜けた緊張感のないやりかたで、少数の人に対して語りかける。ただその内容は豊富な教養に裏付けられており、融通無碍。創価学会員の野原ヨシマサ氏のあとに登場すれば、野原氏の話をうけて仏教思想の話をするし、なぜ馬が選挙に登場する必要があるのかを語ったり・・・

 この二人はよいコンビになると思うのですが!!!